更級日記

『更級日記』物語・源氏の五十余巻2 わかりやすい現代語訳

2020年9月20日

『更級日記』物語・源氏の五十余巻 わかりやすい現代語訳

おばさまから源氏物語全巻フルセットでいただいて、 嬉しく嬉しくて飛んで帰ったの。 おうちに帰ってそれはそれは夢中になって読んだのよ。

『更級日記』物語・源氏の五十余巻2 原文

はしるはしる、わづかに見つつ、心も得ず心もとなく思ふ源氏を、一の巻よりして、人も交じらず、几帳の内にうち伏して、引き出でつつみる心地、后の位も何にかはせむ、昼は日ぐらし、夜は目の覚めたる限り、灯を近くともして、これを見るよりほかのことなければ、おのづからなどは、そらにおぼえ浮かぶを、いみじきことに思ふに、夢に、いと清げなる僧の、黄なる地の袈裟着たるが来て、

「法華経五の巻をとく習へ。」

と言ふと見れど、人にも語らず、習はむとも思ひかけず、物語のことをのみ心にしめて、

「我はこのごとわろきぞかし。盛りにならば、容貌も限りなくよく、髪もいみじく長くなりなむ。光の源氏の夕顔、宇治の対象の浮舟の女君のやうにこそあらめ。」

『更級日記』源氏の五十余巻 現代語訳

おばさまから『源氏物語』をいただいて、
もう嬉しくて胸がどきどき。

これまで少しずつは見ることができたのだけど、
部分的にしか読めなかったから、
思いっきり満足!
と思うほどには読めなかった『源氏物語』。

それを、最初の一巻から、誰にも邪魔されず、
几帳の中で横になって、
箱から取り出してみる気持ちといったら・・・。

お后の位もどうでもよくなる感じよ。

昼間は一日中、
夜は目が覚めている限り。

まさに寝ても覚めても、
灯りを近くにともして、
源氏物語を読むよりほかのことはもうなんにもしなかったの。

だから自然に空で覚えてしまって、
源氏の一節が浮かんだりするの。
すばらしいことでしょ。

そんなある日、夢の中に、
とても清らかな、黄色地の袈裟を着た僧がいらして、

「法華経の五の巻をすぐに習いなさい。」

と言われたお姿を見たの。

でも、このことは誰にも言わず、
法華経を習おうなどとも思いもつかず、
物語のことばかりが心をしめていてね。

「私は今はまだ美しくはないわ。
でも、お年頃になったら、
姿形もこの上なくきれいになって、
髪もすごく長くなるでしょう。

光源氏が愛した夕顔や、
宇治の大将の薫が愛した浮舟みたいになるんだわ。」

と夢見ていた気持ちは、ほんとうにちっぽけであきれるようなことだったわ。

『更級日記』源氏の五十余巻 解説

この時代は、物語を読むのはとってもたいへんなことでしたよね。

なにしろ、印刷技術がまったくなかったので、
人の手で一文字ずつ写していくしかないのだから。

だから、『源氏物語』のような大作の、
全巻そろったものを箱ごとくださるなんて、
考えてみれば太っ腹。

プレゼントにいただいたほうにとっては、
まさに夢見心地、ということです。

しかも、物語の大好きな文学少女の作者。
昼も夜も、お話を読むことだけに夢中になる気持ち。
わかります。

思春期だからこそ、ここまで夢中になれるんですね。

実は私も中学3年生の時、 『風と共に去りぬ』に夢中になって、 分厚い上下2冊の本だったけど、 読み始めたらやめられず、 夢中になりすぎて、授業中にもやめられなくて、 ずうっと読んでいたことがありました。
理科の時間に見つかって怒られたんだけど、 それでもやめられなくて。物語があまりにおもしろすぎたんです。

だから、作者の『源氏物語』にここまで夢中になる気持ちがすごくよくわかります。

法華経を習いなさい、という夢

作者はその後、成人してから、
この夢のことを思い出して信心深さの足りなかった自分のことを反省します。

でも、若い盛りには、
仏教のことを熱心に学ばなくちゃいけない、
っていうのはまだ実感できないのもしかたがない。

目先のおもしろい物語に心奪われてしまうのも無理からぬことですね。

この時代は、仏教に真剣に取り組むことで、
亡くなってから成仏できる、と思われていました。
ですから、生前にいかに仏教に熱心でいるかは大切と考えられていたんです。

作者も大人になってからは、
お寺通いに熱心な日々を送ります。

実はそうやって家族の健康や幸福のために、
熱心にお寺参りをすることは、
主婦のたいせつなお仕事でもあったのです。

平安時代の美人の条件のひとつ

平安時代の美人の条件のひとつは髪の長さでした。
髪の毛がとても長くてまっすぐでふさふさしているのが良いとされていました。

髪の毛について触れた表現やエピソードは、
平安女流文学の中にたくさん見られます。

ちなみに『枕草子』の作者清少納言はちぢれ毛であったためにコンプレックスを持っていたとか、いないとか・・・。

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